それでも僕は書き続ける!!

1996年生まれの阪神ファン。プロ野球や日々の感情を文章に表す楽しみを感じながら気ままに書きます

【野球コラム】阪神タイガースの原口文仁は朝ドラのヒロインだ

  こんばんは。とびたつばさです。先日、文春野球学校2019に参加して、野球コラムの書き方を教わってきました。そこで出された課題として僕が提出したのが、このコラムです。文春野球学校でどんなことを学んできたかの紹介も兼ねて公開します。

阪神ファンはもちろん、プロ野球ファン以外の方にも読んでほしいです。そして、彼のことをいっしょに応援してくれたらと思います。

 

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 僕たちは「連続テレビ小説・必死のグッチ」を見ているんだ。

 阪神タイガース原口文仁のこれまでの壮絶なプロ野球人生をたどっていくと、そんな気がしてならない。

 

 ちなみに必死のグッチというのは、今シーズンから原口がお立ち台で使用することを公言しているキャッチフレーズだ。元々使っていた「必死のパッチ」に自身の愛称をアレンジしたオリジナルで、ファンからの公募で決まった。

 

 周りの人を自然と惹きつけ、誰からも愛される人柄。目標に向かって努力し続けるひたむきさ。時に理不尽とも思える困難にもめげずに立ち向かう強さ。視聴者に元気をわけてくれる朝ドラのヒロインに必要な要素を、原口は持っていると思う。

 だから、原口は朝ドラのヒロインなのだ。

 

 

 

原口のプロ野球人生を朝ドラ風に振り返る

 

【第1章 ケガと戦った育成選手編】

 

 連続テレビ小説「必死のグッチ」は波乱の幕開けで始まる。

 

 物語のヒロイン・原口文仁は入団3年目にして椎間板ヘルニアを患い、これがきっかけで育成選手となった。2年後、支配下登録が期待されたが、今度は試合で帰塁の際に肩を脱臼してしまった。

 捕手である原口にとってあまりにも致命的な腰と肩のケガ。ここまで入団わずか5年の出来事である。当然1軍出場はまだない。

 

 それでも原口はくじけない。いつか満員の甲子園でプレーすることを夢見て、猛練習に励む。

 

【第2章 シンデレラボーイ誕生編】

 

 2016年シーズン、原口の運命を変える出会いがあった。当時就任1年目だった金本監督である。原口の才能にほれ込んだ監督は、開幕直後に原口の支配下復帰を決断。念願の支配下登録を勝ち取った。

 

 そして、育成経験者として初の月間MVP。オールスターファン投票の捕手部門で2位を獲得し、監督推薦で球宴に初出場。3割近い打率と11本塁打。開幕前は背番号124だった男が、気づけばチームに欠かせない存在となっていた。

 

 昨シーズンは正捕手争いには加われなかったが、持ち前の思い切りの良さと力強い打撃で代打として活躍。成功率は4割を超え、その勝負強さは他球団からも恐れられる存在になった。

 

 そして支配下復帰から3年が経ち、今シーズンこそは正捕手のポジションを勝ち取りに挑む。そして見事レギュラーの座を奪った原口は攻守の中心として、最下位に沈んだタイガースを立て直していく……。

 第3章【虎の女房編】は、そんな感じで進んでいくだろうと、僕は勝手にシナリオを描いていた。

 

 

 あの日の、あの信じられない知らせが届くまでは。

 

 

 

突然の発表に絶句 でもそこに原口の強さを見た

 

 

1月の24日、午後3時ちょうど。原口が自らのツイッターである報告をした。

 

「人間ドックを受診したところガンと診断されました」

 

 

 原口が、ガン……? 

 

 

 一瞬、何のことか分からなかった。頭の中が真っ白になった。

 

「どうして原口にばっかり、こんなつらいことが起きるんだ……」

 

 やりきれなかった。理解できなかった。納得したくなかった。その日の夜、僕は友人と酒を飲んだが、原口のことがずっと頭から離れなかった。帰りの電車では人目をはばからず泣いた。寒空が身に染みる帰り道でも、また泣いた。

 

 翌朝、原口がツイッターに投稿した直筆の手紙をもう1度眺めた。ガンになったことがショックで、その中身をきちんと見られていなかったからだ。そこには原口の決意が書かれていた。

 

「今はプロ野球選手という立場でこの病気になったことを自分の使命だとも思えます。同じガン患者の方々、またそのご家族の希望となれるよう精一杯治療に励みたいと思っています」

 

 これが26歳でガンが見つかったプロ野球選手の言葉なのか。原口は僕が思っている何倍も強い男だった。

 

 日ごろから冷静な人でも医師からガンを宣告されると、自分の命を認識してパニックになることも少なくないという。きっと原口だって僕たちには想像できないような不安を抱いたはずだ。

 

 でも原口はみんなの前で弱音を吐かなかった。重い病気ですら、自分にとって何かしらの意味があると前向きに捉えた。

 

 プロ野球選手として、ファンにたくさんの夢と希望を与えてきた原口が、今度は同じ病気に苦しむ人の希望となろうとしている。もしも自分が同じ状況に立たされたら、果たして彼のようにふるまえるだろうか。

 

 どんな困難に直面しても落ち込まず、明るい未来を信じて進み続ける。やっぱり原口は朝ドラのヒロインだ。

 

 

 

【最終章 試練を乗り越えて】

 

 聖書には、神は乗り越えられない試練しか与えない、という言葉がある。

 でも、その試練は何もひとりで乗り越える必要なんてない。明るい人柄に惹かれた登場人物たちが、朝ドラのヒロインのことを応援してくれるように、新たな試練に挑む原口の周りには応援してくれる人がたくさんいる。

 

 原口のツイッターには6500以上の応援リプライが寄せられた。なかには阪神ファンではないけど応援してます、という内容もたくさんある。DeNAの山﨑康晃や、中日の又吉直樹オリックスの安達了一もツイッターで応援メッセージを発信している。

 

 同じく病気からの復帰を目指す横田慎太郎や、広島東洋カープ赤松真人もコメントを残した。ファンが、選手が、球団の壁を越えて原口にエールを送っている。これだけのメッセージが寄せられたのはやはり原口の明るく、優しい人柄によるものなのだろうと思うと、胸が熱くなる。

 

「本当に信ずればそうなるのであり 必ず、信じたとおりにさせるのである」

 

 いま、原口のスマートフォンの壁紙にはこの言葉が書かれた写真が使われているという。原口はいま、野球人生最大の壁に差し掛かっている。

 でも強い原口のことだから、きっと自分は乗り越えられると信じているはず。周りの選手やファンたちも、彼が再び戻ってくることを信じている。

 

 ならば僕も信じよう。朝ドラ「必死のグッチ」が感動のフィナーレを迎えることを。

 満員の甲子園に帰ってきた原口が特大のアーチをかけて、お立ち台で笑いながら「ただいま!」と叫んでくれることを。

 

 

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 このコラムは1月26日に書き上げました。その後、原口選手は自身のツイッターで手術が成功したことを報告しています。本当に良かった。

  

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