コロナ禍でも田中俊太の「手をたたけ」は変わらなかった
2020年、プロ野球ファンは新たな応援の形を求められた。声が出せない。声援が送れない。去年まで当たり前のようにできていたことが禁じられ、もどかしい思いをした人もいたのではないだろうか。
そんな中、去年と変わらない応援の形で球場を大いに盛り上げた選手がいた。
読売ジャイアンツ・田中俊太。彼の名前が東京ドームにコールされると、NICO Touches the Wallsの「手をたたけ」が流れる。
手をたたけ 手をたたけ 願う日は来ないけど
愛を歌え 君を歌え この空が晴れるまで
登場曲が流れるとジャイアンツファンは「手をたたけ」の部分に合わせ、手拍子を刻む。これがまたとても揃っているのだ。新しい応援にファンもどうしていいか戸惑いながらも、俊太が出てくるときは手拍子がピタッと合う。軽い破裂音が球場を包み込むこの雰囲気が、僕はたまらなく好きだった。
東京ドームで流れた実際の映像
去年の夏、東京ドームで一緒に試合を見た妹の言葉が忘れられない。
「この曲で巨人ファン手拍子するようになったよね。みんなに覚えてもらえたんだね」
俊太はずっとNICO Touches the Wallsの「手をたたけ」を登場曲に使用しているが、最初からファンが手拍子してくれていたわけではなかった。
一部のファンが少しずつ曲に合わせて手拍子をし始めて、それにつられて周りのファンも手を叩き……いつしか手拍子の輪が東京ドームに広がっていた。俊太が出てきたら手拍子で迎えるのが当たり前になっていた。あらゆる応援が制限されてしまった今年、俊太の変わらない手拍子を聞いて妙に安心した気持ちになった。
ベイスターズに移籍して登場曲が変わらない保証なんてどこにもない。心機一転気分を変えるなんてのはよくある話だ。だけどもし彼がそのまま「手をたたけ」を使ってくれるのなら……。俊太がベイスターズファンに受け入れられ、再び球場に手拍子が響く光景を、僕は心待ちにしている。
NICO Touches the Walls 『手をたたけ』