それでも僕は書き続ける!!

1996年生まれの阪神ファン。プロ野球や日々の感情を文章に表す楽しみを感じながら気ままに書きます

Jonseyのプライド【11/25 対ヤクルト戦○】

助っ人外国人選手の適応力に驚かされるときがある。
初めての日本の文化、「ベースボール」とは似て非なる「野球」の考え方。戸惑うことも多いはずの1年目を乗り切ると、2年目のシーズンにはすっかり違いを受け入れ、より一層チームに溶け込もうとしている。来日前はMLBや別のリーグで実績を残してきた選手も少なくない。時にはこれまでの価値観を捨てなければならないこともあったはずだ。そう簡単なことではないことは容易に想像できる。

オリックス・バファローズのA.ジョーンズのようなかつての超スーパースターなら、なおさらのことだ。

 

MLB通算成績は1939安打、282本塁打

オールスター出場5回。

ゴールドグラブ賞4回獲得。

2017年のWBCでは不動のセンターとしてアメリカ代表を初の世界一に導いた。

まさに「ベースボール」をよく知り、「ベースボール」で己の地位を築き上げてきた男だ。

 

そんなジョーンズが2年目のシーズンを迎え、どうなったかというと……



日本語で韻を踏めるようになっていた。

 

バファローズが25年ぶりにペナントレース優勝を果たし、メディアでもジョーンズの献身的な姿勢がピックアップされるようになった。

 

代表的なのはイニング間のキャッチボール。本来はベンチに控える若手選手が引き受ける役割だ。

今シーズン本塁打王を獲得したチームメイトの杉本裕太郎には惜しみなくアドバイスをした。スイングの仕方、打席内での考え方。

 

「切り替えが大事なんだ。その中で常にベストを尽くすこと。また新しい1日が始まるから」

切り替えることの大切さを覚えた杉本は、以前のように失敗を引きずらなくなった。

 

f:id:tobitigers:20211127191758j:plain

正直なところ、「チームに溶け込み過ぎでは?」とさえ思ってしまう。まるで10年くらいバファローズに在籍しているようだ。「俺はメジャーリーガーだ!」という思いが強すぎるあまり、日本の野球や文化に適応できないままシーズンを終えてしまう外国人選手だって珍しくない。

 

少しイジワルな言い方だが、ジョーンズにプライドはないのだろうか?

 

 

日本シリーズ第5戦。負ければシリーズの敗退が決まり、勝てば神戸に戻れる大一番。リードを奪って終盤を迎えたが8回にスワローズ・山田哲人が同点3ランを叩き込んだ。間違いなく球場の雰囲気はスワローズに傾いていた。

 

東京ドームが山田のホームランの余韻に浸っている中、ジョーンズは9回表の先頭打者に代打起用された。スワローズのピッチャーはS.マクガフ。初戦は逆転サヨナラにつなげる四球を選んだ。

マクガフの投球は2球続けてボールになる。ジョーンズの視線が鋭くなったように見えた。ストライクを取りに行った3球目。軽くスイングしているように見えたが、打球はレフトスタンド中段付近に届いた。

 

f:id:tobitigers:20211127191717j:plain

代打打率.429。驚異的な代打成績を残していたジョーンズがNPBで放った初めての代打ホームラン。だが表情は一切変わらない。まるで「自分の実力ならこれくらいやって当然さ」と言わんばかりに、悠々とダイヤモンドを一周した。

 

「代打なのか、応援なのか、どんな形で試合に出るのかは分からない。2月1日からここまで戦ってきた仲間と最高の瞬間を迎えるために、私ができることはすべてやる」

 

そこにあるのは、勝利への執念だろう。

仲間と共に頂点を掴むために、そのためなら何だってやる。プライドがないから黒子役に徹するのではない。チームが勝つためならイニング間のキャッチボールだって代打だって引き受ける―

ジョーンズは誰よりもプライド(誇り)高きプレーヤーだった。

 

 

その年の補強の目玉であったジョーンズは当然のように応援歌が作られた。

youtu.be

行け燦燦(さんさん)と 晴れやかに伸び上がれ

全て巻き込め 話題をさらえ

Go with Number 10

 

マクガフから代打ホームランを放ったあと、Twitterのトレンド1位は「ジョーンズ」になった。値千金の一振りで、文字通り話題をさらった。

 

Go with には「一緒に行く」のほかに「調和する」という意味がある。

チームが25年間待ち望んだ頂点まであと2勝。

ジョーンズがもたらす調和が、チームを歓喜の瞬間に導く。