大山悠輔の目に光るもの【10/26対中日戦●】
ベイスターズを5対1で下したスワローズ。
程なくして、スワローズの選手とファンのための、パプリックビューイングが始まった。
横浜スタジアムのビジョンに3塁を守る真剣な眼差しの大山悠輔が映る。
甲子園でタイガースが敗れたその瞬間、スワローズの優勝が決まる。
タイガースは8回まで無得点。最終回で点差は4点。
糸原健斗、J.マルテが倒れ、この日スタメンだった大山悠輔に打席が回ってきた。
2球目のストレートを引っ掛けた。
大山がいつも欠かさなかった全力疾走。それも及ばず、大山はショートゴロに打ち取られた。
試合が終わった。
シーズン最終戦なので、試合後には矢野燿大監督のあいさつがある。
皆でグラウンドに整列して一礼した。他の選手の一歩前に出てあいさつするのは、キャプテンの大山だ。大山のおじぎはセリーグで1番きれいだと思っている。
大山の目が潤んでいるように見えた。
一礼して顔を上げた大山の、目の周りが赤くなっているように見えた。
……泣いているのだろうか。
「チームの勝敗は全部自分が背負う」
この言葉に嘘偽りはなかった。
タイガースのキャプテンとして、4番の役割も、勝敗の責任もすべて背負ってきた。
試合が決まる重要な場面。幾度も迎えたチャンスで大山は結果を残した。
得点圏打率は低くても、勝利打点は15あった。
雨の中決めた、神宮の勝ち越し3ランホームラン。
最終回に4点を奪って逆転したサヨナラヒット。
ジャイアンツから首位を奪い返した逆転サヨナラホームラン。
それでも、頂点を掴むことはできなかった。
信じて疑わなかった。大山に歓喜の瞬間が訪れることを。
タイガースが優勝の喜びを爆発させ、その輪の中心にキャプテンがいることを。
叶わなかった。
虎の4番。虎のキャプテン。
そのプレッシャーがどれだけのものか、僕は想像することしかできない。
きっと僕が想像しているよりずっと強大で、怖いものなのだろう。
悔しいよな。
僕も悔しいよ。
143試合目。
タイガースの優勝の可能性が無くなった。
ずっと、今もずっと、大山が目を擦る姿が頭を離れないでいる。
次は、笑って涙を流そうな。