それでも僕は書き続ける!!

1996年生まれの阪神ファン。プロ野球や日々の感情を文章に表す楽しみを感じながら気ままに書きます

【感想】NHKドラマ「うつ病九段」を見て

 

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旅好きが転じて、僕は水曜どうでしょうを見るようになりました。たぶん…10年くらい前だったと思います。それがきっかけで、どうでしょうの出演者に興味を持つようになりました。

 

ONちゃん……ではなく、安田顕さんが主演したNHK特集ドラマ『うつ病九段』を見ました。

安田顕 主演ドラマ『うつ病九段』12月20日よる9時 放送決定! | お知らせ | NHKドラマ

 

 

 

以下あらすじ NHK公式HPより

2017年7月、先崎学九段(安田顕)は対局中に突然、思考停止に陥った。将棋界を揺るがす不祥事に、

将棋連盟の広報として対応していた先崎は、同時に将棋映画の監修も手がけ、多忙な日々を送っていた。

 

精神科医の兄・章(高橋克実)は、弟の症状を「うつ病」と断定し、直ちに入院を薦める。担当医は長期休養と、将棋禁止を命じた。極度の集中力を強いる将棋は、治療の妨げでしかなかった。

囲碁のプロ棋士でもある妻・繭(内田有紀)は、同じ勝負師として必死に支える。

 

家族や、将棋界を巻き込み、復帰の可能性にかけた、壮絶な闘病生活が始まる。

 

 

安田さんが演じられた先崎学さんは、将棋界の最高位、九段の棋士です。みなさんご存知羽生善治さんと同い年で、羽生世代と呼ばれることもあります。人気将棋漫画「3月のライオン」の監修を務められるなど、将棋界の発展にも力を注がれています。

 

俳優・安田顕さんに持つ僕のイメージなんですが……

  • 若いときは二枚目好青年の役
  • 最近は硬派な役も
  • ときおりやるすっげえ変な役もなぜかハマってしまう

 

こんな感じでした。今回の『うつ病九段は、どれにも当てはまらなくて。いったいどんな感じなんだろうって思いながら放送を楽しみにしていました。 

 

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90分の放送があっという間でした。印象的なシーンが多すぎて、何から書こうか……って感じになってます。

 

まず、開始15分の演技がすごかった。

対局を終えた後、自宅に戻ったときの演技なのですが、明らかに様子がおかしいんです。表情がうつろなのに目線は据わっていて怖かった。「重いうつの人ってこんな感じなんだ…」って感情を視聴者に植え付けるには充分過ぎました。

後ろで見ていた僕の母が「こんなんなっちゃうんだ……」とつぶやいていたのが印象的でした。

 

兄に勧められて入院した先崎さん。入院当初はモノクロに見えていた周りの光景が(重度のうつ病患者は色が分からなくなる症状が出ることがあるそうです) 数カ月後、花火を見て「色が分かる!」と静かに叫んだシーンがありました。

驚きと喜び、そして自分の症状がどれだけ重かったかを理解したような……そんな表情でした。花火の色が他の人と同じように見えることで、「あのときの自分は相当重い症状だったんだ…」と悟ったような感じでした。

簡単に文字で表現することはできない表情に、思わず心奪われてしまいました。(なんとか伝わってくれ)

 

このドラマはうつ病患者の立ち直り、というよりはそれを支える周りの人もスポットライトを当てていました。先崎さんの奥さんは囲碁のプロ棋士です。同じ勝負師だからこそ、将棋が指せなくなった夫がショックだったのでしょうね。

最初は薬を服用して、早く治療してすぐにでも復帰させたいのであろう言動が目立ちます。

 

でもこれ、うつ病患者にはやってはいけないことなんですよね。

焦りや不安はうつの人に伝染します。

 

「今は休ませてあげなきゃ…!!」そう思いながらもどかしくて、ハラハラしながら見ていました。

 

退院後、奥さんは将棋と囲碁のサロンを開設します。きっと先崎さんに将棋の楽しさを思い出してほしかったのでしょうね。でもうつ病の人にたくさんの判断を強いる行為は絶対NGで。あるいは、発症前なら普通にできていたことが普通にできなくなった事実にショックを受けるうつ病発症者も多いそうなんです。

 

先崎さんも他の人の対局を見ても頭が働かないことにショックを受けて、奥さんに当たり散らしてしまいました。色んなショックが大きすぎて、感情のコントロールができなくなっているんでしょうね。(このシーンの演技も素晴らしかったです安田さん)

 

この出来事から、奥さんの考えが変わっていきます。

 

「早く治してまた将棋を指してほしい」から、「ゆっくりでいいからまた健康な状態に戻ってほしい」に。優しくサポートしていく姿勢に変わってホッとしました。

 

あとは安田さんの涙。

  • 自分の異変を自覚しつつも、不戦敗はしたくないという悔しみの涙(うつ発症時)
  • 花火を見て、症状が回復したことを自覚する涙
  • 奥さんに当たってしまった後悔と、以前のように将棋がさせなくなっていた悲しみの涙
  • 師匠の自宅を訪れ、もう1度棋士として復活する決意に満ちた涙
  • 自分の弟子と将棋を指して、前のように頭が冴えて勝負に勝てた喜びの涙

 

安田さん演じる先崎さんが涙を流すシーンがいくつもあったのですが、それぞれ全く意味合いが違っていて。「あ、こういう理由で泣いているんだな」ってのが画面越しに伝わってきました。その演じ分けが素晴らしかったです。伝わっているかなあ…(自信ない)

 

ここからは自分の話になります。

実は今年の夏頃、ちょっと心のバランスを崩してしまいました。仕事に慣れてきたかなって時に緊急事態宣言が発令され、準備もほどほどに始まったテレワーク。環境の変化が苦手な僕にとって、いきなり始めるテレワークはきついものがありました。夏の初め、1日中気持ちが落ち込むようなことが続くも、誰に頼っていいか分からず。なにかにすがる思いで、近くのメンタルクリニックを診断しました。

 

 軽いうつになりかかっていると診断されました。薬を服用されました。(体に合わず、結局使いませんでしたが)数週間に1度のカウンセリングを受け、およそ2ヶ月弱通院しました。先崎さんの症状と比べたら全然大したことないのですが、うつの入り口に足を突っ込んだような気がしてとても怖い思いをしました。

 

何が言いたいのかというと、不安な事が多くて先が見えない今、うつ病は万人にとって決して遠い存在ではないと思うのです。

 

うつ病が気持ちの問題、っていう人、本当にまだいるんですかね。そこまでではないにせよ、間違った認識を持っている方、事態の深刻さを正しく理解していない人はまだまだいるんじゃないかなというのが、僕の所感です。

 

うつ病を知っている自分ですらショックな内容が多かったのに、ほぼ触れてこなかった人には相当衝撃なドラマだったと思います。

BS放送なのがもったいない。いつか地上波でもう1度放送してほしいですね。

 

www.nhk-ondemand.jp

明日からNHKオンデマンドで配信されるそうなので、気になった方は見てみてください。1本完結90分です。

 

最後に、安田さんが撮影を終えた後に受けたインタビューのコメントをみなさんにご紹介しますね。

「物事をまじめに、真剣にとらえすぎるより、適度に、適切に、適当に。『なんくるないさ』というものを、どこかで持っていないといかんぞ、と……。このご時世、今はそれを持つことの方が大変ですが、そういうものを持っていることは大事だなと思っています」

 

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