それでも僕は書き続ける!!

1996年生まれの阪神ファン。プロ野球や日々の感情を文章に表す楽しみを感じながら気ままに書きます

帰ってきたヒーローへの葛藤【5/25 対ロッテ戦 ●】

甲子園に、鳥谷敬が帰ってくる――
そう思えば思うほど、今日1日はなんだか落ち着かなかった。確かにまた甲子園でプレーする姿が見られるのは嬉しい。でも、もう鳥谷は味方じゃない。リーグの違いはあれど、戦う敵同士だ。

 

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僕の頭の中で幾度も脳内会議が繰り広げられる。

(2年ぶりの甲子園なんだ! せっかくだからヒットを打つ姿見たいよ)
(何言ってんだ! 鳥谷が打つってことは投手の誰かが打たれるってことなんだぞ)
(そうはいっても鳥谷だって頑張ってるし、ずっと応援してきたから……)

会議は踊る、されど進まず。脳内の討論は平行線を辿り、結論は出なかった。
ついでに僕が上司に頼まれていた、会議資料の作成も進まなかった。

甲子園で千葉ロッテを迎え撃つ3連戦。球場に駆けつけたお客さんの中には、背番号1のグッズを身に着けている人もいる。梅野隆太郎はRedfooの「Let's Get Ridiculous」を登場曲にして打席に入る。2014年頃の鳥谷が登場曲に使っていた曲だ。ファンも選手も久々の再会を楽しんでいるようだった。

7回の表、甲子園に拍手が響く。背番号1、じゃなくて背番号00が代打で出てきた。しかも1アウト1,2塁。阪神は2点リード。ここで打たれたら点差を縮められて強力な上位打線に回る。ましてやホームランなんて打たれたら――。

結論が出ないまま閉幕したはずの脳内会議が、再び始まった。

(ここは試合の勝敗に関わる場面だ。悪いけどゲッツー打ってくれ)
(でもここで打ったらきっと盛り上がる、また甲子園湧かせてくれる鳥谷見たいよ……)
(ここで打たれたら今日の試合どうなるか分からないんだぞ!!)
(だけどそういう場面で打ってきたのが鳥谷じゃないか)

テレビを見ながら葛藤していることなど露知らず、鳥谷は鮮やかに一二塁間を破っていった。二塁ランナーの角中勝也がホームに帰ってくる。鳥谷は塁上で「よっしゃあ」と言っているような口の動きをしていた。

そういえば、2017年に甲子園で2000本安打を達成したヒットも、一二塁間を鋭く破る当たりだった。あの日のヒットは最高に嬉しかったけど、「ロッテ」鳥谷のヒットは……悔しかった。
大好きなタイガースの投手が打たれたこと。しかも大好きな鳥谷から打たれたこと。僕の頭の中は目の前の光景を追うので精いっぱいだった。

思えば、いつも打ってほしい場面で結果を残し、何度もファンの期待に応えてきた。その対象が阪神ファンから、ロッテファンに変わっただけ。
鳥谷はチームが変わっても鳥谷だった。そのことが分かって嬉しかったし、悔しかった。

確かに対戦しているときは心がざわついた。けれども試合が終わってからは、そのざわつきも楽しもうと思えた。「打ってくれ」「打つな」。別に白黒はっきりさせる必要もないのではないだろうか。真剣に応援していたからこそ、その気持ちは簡単に割り切れないことに気づいた。

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通算1000得点の表彰を受ける鳥谷(2021年5月9日ZOZOマリン)

移籍してもなおファンの心を掴んで離さない。チームが変わっても鳥谷敬はヒーローだった。