強い気持ちで”夢拓け”【9/3 対巨人戦○】
阪神タイガースの中野拓夢は、幼い頃から阪神ファンだったそうだ。
山形県の出身だが、お父さんの影響で阪神に興味を持ち、一緒に応援するようになった。「阪神ファン・中野」のお気に入りは強打の内野手、今岡誠。2003年と2005年、2度の優勝に貢献した天才打者だ。
好きな選手が同じだったことに、つい親近感を覚えてしまう。同じ年代の選手を応援していた人が甲子園のグラウンドに立っている。なんだか不思議な気分だ。
8月のおわり、中野に待望の応援歌ができた。他のチームを見渡しても、シーズン中に個人の応援歌が作られることは異例だ。今演奏されている大半の応援歌はペナントレースの開幕前に発表されている。
タイガースを応援していた中野なら、個人応援歌が割り当てられることのすごさも十分に分かっているはずだ。
個人応援歌は全ての選手に作られているわけではない。試合に出続けて結果を残し、ファンに親しまれる選手になってはじめて曲が与えられる。ずっと1軍にいるだけでは作られない。個人応援歌は応援団とファンの期待の現れでもあるのだ。
球団のスタッフから応援歌が作られたことを伝えられた中野。喜び、表情を緩ませながらできあがった曲を聴く。「阪神ファン・中野拓夢」に戻っているようにも感じられた。
明日の中日戦@甲子園から、#中野拓夢選手 のヒッティングマーチが登場します!
— 阪神タイガース (@TigersDreamlink) 2021年8月30日
先週、出来たての音源をご本人に聞いて頂きました!#阪神タイガース #挑超頂 pic.twitter.com/KHKkut0l73
強い気持ちで 勝利を目指せ中野
さあ夢を拓け 打て走れ中野
中野はこれまでのインタビューで「強い気持ち」という言葉を何度も使っていた。口から発した言葉には言霊が宿る。まるで自らを奮い立たせるかのように、中野はこの言葉を口にしてきた。気迫を前面に出すプレーは中野の持ち味だ。歌詞にも「強い気持ち」が採用された。
プロ入り初の1番でのスタメン。矢野監督を象徴する「1番・近本光司」を崩したオーダーを組んだ。それはチームとして何かを変えなければいけないピンチを迎えていたのかもしれない。それとも、中野の「強い気持ち」に託したか。
7回の裏、1番の中野に打席が回ってきた。2アウトながら満塁のチャンス。一打勝ち越しの場面だ。ジャイアンツのピッチャーは左の大江竜聖。インコースに投じたストレートがボールになり、フルカウントになった。押し出しでも1点が入る。声が出せない甲子園にメガホンを叩く音が響いた。
大江の投じたボールは中野の内角高めに外れた。見逃せばボールだったかもしれない。でも中野は押し出し四球を狙わなかった。自分で打ちにいって試合を決めようとした。まるで身体で反応したかのようにスイングした。緩やかに上がった打球はグングン伸びてライトフェンスに当たった。打球が転がる。中野はあっという間に三塁ベースに達した。大山悠輔の同点打と中野の勝ち越し打で、ラッキーセブンに5点が入った。
甲子園のお立ち台に上がった中野。勝ち越しのタイムリーについて聞かれて発したのは、いつものあの言葉だった。
「強い気持ちで打てて良かったです!」
3点ビハインドからの逆転勝利。強い気持ちが劣性を跳ね返した。